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彩りを楽しむ京懐石

一昨日、両親を連れて所用で京都に行った際、下鴨神社・糺(ただす)の森や鴨川の川べりを散歩したのに先だち、糺の森のそばにある京懐石料理の店に両親を招待して、リッチなランチを張り込みました。

懐石料理の店に個人で行くことなど普段はまずありませんし、学生時代を京都で過ごしたとはいえ京懐石の店に行くのは、ふた昔も前にあった友人の結婚披露宴のとき以来だと思います。

当初は、名前と場所だけを知っていた有名店の「下鴨茶寮」を予約しようと思ったのですが、急に思い立って直前だったためあいにく満席。
携帯でネット検索して見つけたのが、最近ミシュランの2つ星を獲得したという「吉泉(きちせん)」でした。

ミシュランの店を個人ブログで紹介して、応援する意味はなさそうなものですが、普段のランチの約10倍もの値段がする10年に1度あるかないかの食事を、漫然といただくだけで終わるのは、もったいないことですし、彩りを楽しむ京懐石ですから食べるだけでなく写真も楽しませてもらおうということにしました。

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通りの反対側でタクシーを降りて、近くの横断歩道を渡り店に向かって歩いていくと、玄関先の歩道に和服を着た給仕の男性が立っていて、うやうやしく頭をたれて出迎えてくれました。
予約した時間に10分ほど遅れそうになり、途中で電話を入れたためかもしれませんが、うれしいものです。
さらに玄関を入ると、今度は店の女将さんが出てきて、床に両手をついて、あいさつしてくれます。

高価な料理の値段やサービス料を考えると「それぐらい、当たり前でしょ」と思われる向きもあるでしょう。
でも、高いお金をいただくからには気合いを入れてサービスをしようという気持ちもまた、「おもてなしの心」であることに違いはありません。

大学時代の私は、京都の人たちが腹の中で何を考えているか分からない感じがする一方で、もみ手をしてはニコニコとした笑顔で人に接するのを見て「うそくさい」ように思い、反発する気持ちさえありました。

でも長らく生きてきたなかで、自分自身が他人に見せる笑顔のうち、どれが本物で、どれが作り物であるかの区別など、つけようがないことに気付きました。
そうして得た自分なりの結論は、本物の笑顔だけを見せるよりも、作り物でも良いからたくさん笑顔を見せた方が自分も相手も幸せな気持ちになれるものだということです。

人間の心なんて誰の心であっても、その中に常に計算や打算が交じっていることなどごく当たり前であって、そうしたネガティブな心の部分も含めて、自分の心を素直に受け止める方が、より自然で楽にいられます。
そして計算も交じった「偽善」でも良いから、少しでも「善い」行いを重ねたいと思うわけです。

ほかの人にとっては、そんな行いの裏にどんな気持ちが隠されていようが、たいていはどうでもよいことです。
ネガティブな部分も渦巻いている自分の心も、無理にでも善い行いをしていれば、マシになれる気もしますし。

おおっと、とんだ脱線をしましたが、写真の説明に戻ります。
店に入って通された部屋は、畳に床の間のある和室に低いテーブルとイスを配置した和洋折衷のスタイル。
窓の外には糺の森が見え、女将さん自らがアペリティフの日本酒をかわらけの杯についでくれました(左)。

それに先立ち、一口サイズの和菓子とともに、たてたばかりの抹茶が運ばれてきました(中央)。
鮮やかな薄緑をした抹茶の表面に浮かぶ泡は、虹色に光っていました。
食事の初めに甘いモノを出すなど、順番が違うようにも思いますが、その後に続く少量ずつの料理の数々を、がっつくことなく味わうため、事前に血糖値を少し上げてもらうというのは、料理を出す側の配慮だったのかと後になって思えました。

最初に運ばれた料理の器は、今年と来年の干支である卯と寅をデザインしたもの(右)。
置物か土鈴にしか見えない陶器が運ばれてきた瞬間「何が始まったのか」と呆気ににとられましたが、フタの部分を開けてようやく、彩り豊かで遊び心あふれる京懐石の本番がスタートしたことを悟りました。

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少量ずつが次々に運ばれてくる料理の数々は料理の味や彩りも、器や飾り付けも繊細で凝ったものばかりで目を奪われ、舌を驚かされるものばかりです。
自宅でもつくれそうな料理を外でいただくと、味にも量や値段にも注文をつけたくなることが多いものですが、自宅では絶対につくらなさそうな料理を出されると、そんな邪心がわいてくる余地すらありません。

栄養バランスや値段を考えると自宅でつくる料理の方が上なのは分かりきっていますし、味の方もほとんどの場合は自分でつくる方が上だという自負も私にはあります。

しかし、この京懐石のように素材の味や香りを、その細部まで引き出そうと努力を重ねたうえに、見た目でも細かい芸をつくして工夫を凝らされると「自宅でつくれば」という仮定をたてようもありません。
言ってみれば、こういう超越してぶっとんだ料理こそ「究極の外めし」なのかも知れないと思いました。

という具合に総評はしてみるものの、料理1つ1つに細かな評を加える力は、私ごときにはありません。
それでも、写真的にきれいで、珍しかったものを中心に幾つかだけを紹介してみます。

柚子の実の中身をくりぬいた器に入っていたのは栗やムカゴが入った炊き込みご飯(左)。
フタの部分は閉じて供されましたが、その中には初冬の季節の香りと味がつまっていました。

朴葉に包んでシイタケと一緒に蒸し焼きにした魚もまた、香り高く、うま味が凝縮された一品(右)。

柚子の皮を刻んで散らした「ふろふき」のカブも、それらの料理と一緒にお盆に並べ、器の彩りも見えるようなグループショットも撮っておきました(中央)。

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ゆでたカニは野趣あふれる巻き簀にくるみ、その上にカエデや銀杏の葉を散らしてありましたが、これも巻き簀を開いて、自分で葉を散らし直し撮影(左)。

刺身はざらめ雪のような氷に覆われるように盛り付けられ、冷たく身がしまって絶妙な歯触りでした(中央)。
ツマの辛みダイコンやハマボウフウの香りも、魚介の味を引き立てました。

さほど上等ではない1合だけの日本酒が、大量の氷と落ち葉、それに和紙も使って飾られ出てきたのには、さすがに驚きました(右)。
でも、これだけされると、一口の酒でも、とことん味わいながら飲む気になるもの。
普段はもっと美味しい酒を自宅でガブガブやっている私としては、体にも財布にも良いチビチビたしなむ酒の楽しみ方を教えられたような気になりました。

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デザートで出てきたオレンジのゼリーは、やはり実の器に入っていて、チュルチュルと柔らかい舌触り(左)。
フタの部分に残った身を絞ると、いっそう香りが立ち、さらに後方に見える小瓶に入ったオレンジキュラソーをたらすと大人の香りが加わります。
いただいているアルコールが足りない感じがして、つい何滴もたらすと、バランスが崩れてしまいましたが。

ほうじ茶を入れた浅い茶わんの内側には、糺の森を舞台にして青葉のころに行われる「葵祭」を連想させる葵の模様が施されています。その茶色と金色が、赤茶色のお茶となじんでいました。

女将さんと給仕の男の子たちは、帰り際にも玄関先まで見送りに出てきてくれました(右)。
歩道が狭くて十分に引いた絵を撮れず、皆さんの頭と足の先に余裕がなくなってしまい、失礼しました。
そして店の皆さんは、私たちが糺の森に向かい、お互いに見えなくなるころまで頭を下げ続けてられました。

最後の最後まで、なんとも、こそばゆいながらも、いい気持ちにさせていただきました。

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