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“走るマラソンカメラマン”辰巳郁雄写真展 走った!撮った!世界のマラソン

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ウルトラトレイルの猛者

先月18日から20日にかけて、富士山のふもとや近くの山を1周するコースで開かれた新しいトレラン大会「ウルトラトレイル・マウントフジ」を見事完走した駆けっこ仲間が本日、名古屋を訪れて、一緒に祝杯をあげました。
その仲間は、このブログでは常連である中学高校の同級生にして、大阪でトレランサークル「チームジダン」を率いてられる「監督」のジダンさん。

走行距離156キロ、累積標高差8500メートル、制限時間48時間という、まさにウルトラなレースの完走に向けて1年以上もの準備を重ねてきたというジダンさんは、完走率が3分の2程度の過酷な条件の下、「40時間以内の完走」という目標を、有言実行でクリアされて39時間台という好記録でゴール。

レース前は、大好きなお酒を1カ月も抜いた反動で、その後は美酒にまみれた酒びたりの日々が続いているということで、練習不足のままで次の日曜の飛騨高山ウルトラマラソン(100キロ)に臨もうとしている私は、そのパワーを分けてもらおうと目論んで、せめて5日間ぐらいはお酒を控えた方が良いと分かりつつも、調子を合わせて、たっぷりいただいてしました。

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ウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)は、モンブランを1周する、世界でも最も過酷なトレラン・レースであるウルトラトレイル・デュ・モンブラン(UTMB)に参戦し、上位入賞されている日本でトップのトレイルランナー・鏑木毅(かぶらぎ・つよし)さんが、自らプロデュースされた大会です。
本場と同じような感動と達成感を味わえるレースを日本でもつくろうとして立ち上げられた大会は、地元との調整が難航したり東日本大震災で開催が1年遅れたりしたものの、やっと日の目を見ることになって、80数キロの短めの距離の部と合わせて1000人以上が参加しました。

私はいつものように去年のレースに向けた参加申し込みで出遅れ、短い距離の部に出る資格を、いったんは確保したものの、やはり長い方に挑戦したいと思って再び申し込んだところ落選。
多くのランナーがゴールした日には、ぎふ清流ハーフマラソンで、写真を撮りながらファンランをしました。

それに比べてジダンさんは「レースにかける熱い思いは、鏑木さんにも負けないほど」などと豪語するほどの気合の入れようで、数年前に名古屋から金沢までの270キロを走る大会を完走したのに続いて、今回も長く苦しい練習を積んだうえで快走して、着々と大きな目標を乗り越えてられます。
同じトシ、同じ趣味の同窓生の駆けっこ仲間としては、ただただ感心して、彼を見上げるばかりです。

ただ達成した目標が大きいほど、その反動も大きいようで、さすがのジダンさんも次なる目標を立てるまでは気力が少しばかり緩んでしまわれるのかも知れません。
ここはひとつ、私が計画にかかわる韓国・済州島でのハルラ登山競走に、チームメンバーを誘って乗り込むという計画を立ててみられるのは、いかがなものでしょうか。

そうそう、掲載した写真は、ご覧の通りの4枚。
好タイムでの完走という偉業に「輝く」ジダンさんの喜びの表情を、大サービスで2枚アップしました。
1枚は乾杯の際のVサインのポーズ。もう1枚は、UTMFのパンフレットを持ってもらって撮りました。

2カ月前に一緒に食事をした繁華街・栄(さかえ)の中華料理店に入ろうとしたものの、既に閉店して別の店に変わっていたことから行ったのは、手羽先料理で知られるチェーン店の「世界の山ちゃん」。
山ちゃんは値段が手ごろなうえ、禁煙席を設けている店が少なくないことと、私の愛飲する銀河高原ビールが飲めることが、うれしいところで、本日の1杯目も銀河高原の生でした(中央左)。

銀河高原ビールは、岩手県西和賀町のメーカーが醸造する、「全国区」の地ビールの草分け的な存在。
西和賀町は、私が仙台で勤務していた20数年前、テントを担いで東北地方の山を巡った際に登った知られざる東北の名峰・和賀岳のふもとにあり、酵母の香りがみずみずしい銀河高原ビールを口に含むと、牧歌的で広大な高原と、夏空に真っ白な雲が浮かんでいた付近の風景が目に浮かんできます。

そしてまた山ちゃんには、銀河高原と同じく岩手で醸された「あさ開(ひらき)」(右)をはじめ、宮城や福島を含む被災地の地元県の日本酒が「復興支援」と銘打って用意されていて、こちらも次々に2人で味見しました。

※※※

さて、トレイルランナーの間で大きな話題となったUTMFですが、抽選に漏れて今年走りそびれた私が来年の大会に向けて再度、抽選に臨むかどうかは、今のところ分かりません。
「富士山の周りを、ぐるっと1周する」というのは、日本人にとっては魅力的なコンセプトではありますが、これは単純に、モンブランの周りを1周するUTMBのコンセプトを、いわば強引に移植してきたものです。
プロデューサーの鏑木毅さんが、UTMBに対する熱い思いを胸に、その姉妹レースを日本で立ち上げたいと願われた思いが形を結んだものです。

しかしながら、本家のUTMBと、日本版のUTMFは、実際のところ相当に赴きの異なる大会のようです。
私自身、どちらも未経験であることから憶測でモノを言う部分があるかも知れませんが、地図などを見る限り、まずは双方の大会で走る場所の「山深さ」や「自然度」といったものは、まるで異なります。

UTMBは、山深い山塊であるアルプスのうち、岩と氷の領域である中心部に足を踏み入れず、それを囲む、いわば「前衛の山」を走るもので、そのコースは、まだまだほとんどが山深い原生自然の中で、標高も1000メートルから3000メートル近くまでを上り下りするようです。

それに比べてUTMFは、富士山が独立峰であることから前衛の山というものは存在せず、走るコースは裾野の森の中や、いったん町に下りてから登り直す、その外側にある近隣の山になっています。
ということで、標高も2000メートル以下の、どちらかといえば人の手が入った「里山」を走る部分が多く、トレイルではない舗装路などを走る部分も少なくないようです。

そもそも富士山そのものが中腹まで何本もの道路で切り刻まれ、登山道沿いに山小屋が林立する開発の進んだ山で、そのために世界自然遺産にはなり得ない(その代わりに地元などは世界文化遺産の登録を目指しています)、山登りの対象としては魅力の少ない山ですから、その周辺で豊かな原生自然に触れることは難しいと言えます。

というわけで、本場のアルプスの大自然を満喫できるUTMBとは対照的に、UTMFは2晩徹夜して156キロも走るというのに、里山や里そのものを縫って走るという大会なのです。
それでも、引きつけられる部分があるとすれば、やはり「富士山を1周する」という壮大なチャレンジであることと、日中には、富士山をいろんな角度から見られるという点ということになるのでしょう。

そうそう、それにトレイルランナーにとって神様のような存在である鏑木さん自らが立ち上げたという事実も、大きな魅力になっているもようです。
それでも、「ウルトラトレイル・マウントフジ」という名称は、やはり言い過ぎで、「富士見(富士山見物)ウルトラトレイル」とでも言えば、実態に近くなるのだと思います。

そんなふうに考えると、私自身が、自然に包まれたいと思って足を運ぶ山で、タイムや順位を競うトレランのレースを開くこと自体に、さほど肯定的でないのだということを実感します。
真面目に練習して、タイムを狙って頑張ったのは富士登山競走だけで、それは大きなチャレンジだったからであるとともに、富士山そのものが、自分としては登山の対象とするには役不足な山であって、駆けっこを楽しむのに、ちょうど良いと思ったからでもあります。

それであれば、韓国・済州島で漢拏山に登る「ハルラ登山競走」の企画に、私がなぜ、かかわっているのかということになりますが、それは何はともあれ「言い出しっぺ」であるからです。
そして、お恥ずかしながら、制限時間内の完走を果たすまでに何年もかかった富士登山競走が、私のような市民ランナーにとって厳しいチャレンジであって、それを乗り越えた際の感動も大きかったことから、そうした場が隣の国でもできればと、当初は思っていたからでした。

スケールも思いの強さも比べものにはなりませんが、鏑木さんが、UTMBのコンセプトを日本に「移植」して、UTMFを始めたのと同じように、富士登山競走を移植するようにして、ハルラ登山競走を開くことができればと思ったということです。

しかし実際に下見に行ってみると、富士登山競走を、そのままの形で韓国に移植することなどできないことが分かりました。
私は当初、富士登山競走の際、山ろくの富士吉田市役所をスタートして山頂まで一気に登るのにならって、漢拏山でも海岸に近い市街地の済州市役所などから、一気に山頂を目指すのが良いように思っていました。

ところが、市街地から登山口までを結ぶ道路は、交通量が多くて規制が難しそうにみえるうえ、歩道も十分に整備されていないことから、そこを走るのは現実的ではありません。
それに、交通規制ができたとしても、傾斜が緩く延々と長い舗装路を走るのは、どう考えても楽しそうには思えません。

それよりも、漢拏山の魅力は登山口から上の広大な核心部分が、富士山とは比べものにならないぐらい豊かな自然に包まれ、開発が厳しく規制されていると同時に、良く保全されていることですので、やはりこの一番に魅力のある部分を中心に走るのが、漢拏山ならではの楽しみ方だと思うに至ったのです。
そして、荒涼とした火山灰と岩ばかりの富士山では、歯を食いしばりながらタイムを目指して走るのも悪くありませんが、漢拏山では、エリートたちにはタイムや順位を競ってほしいものの、その他の多くのランナーには、豊かな自然を味わうことができるように、楽しく余裕をもって走ってほしいと思うわけです。

もちろん将来的には、登山口までの道路ではなく、最近整備された森林浴用のハイキングコースを利用してロングコースをつくることもできそうですが、まずは、トレランそのものが根付いていない韓国で、地元の登山愛好家や市民ランナーを巻き込んで、一緒に自然を楽しむイベントを開催してみることが大事なのです。

そんなふうに考えると、UTMFというイベントは、「富士山を1周」「100マイル(約160キロ)走る」といった枠がまずあって、半ば強引にコースをつくったような感じがして、これが日本でUTMBに肩を並べる大会の、あるべき姿だったのかどうかについては、ちょっと疑問が残ります。
もちろん、鏑木さんは当初、もっと富士山の山頂近くに分け入るコースを想定していたものの、関係機関との調整が思うようにいかなかったという話も聞いていますし、里山や町も通過することから、かえって地元との触れ合いといった、自然とは別の魅力もあるのだとは思います。

ただアルプスに向こうを張ろうというのなら、アルプスに負けないほど自然が豊かな南アルプスや北アルプスもあるわけで、これらの山々は前衛の山にも恵まれているうえ、核心部であっても一流クライマーでない一般の登山者やトレイルランナーが安全に歩行・走行できるところがほとんどです。
そんなことは、トレイルランナーではなくても、日本の山が好きな人なら誰でも知っていることでもあって、日本ならではの自然を楽しめるロングトレイルというなら、断然、富士山1周などになるはずはないと思います。

そんなふうに言っていながら、結局のところ、やじ馬根性の強い私としては、走れるなら1度は走ってみようという気持ちから、来年のUTMFに申し込むことになるのでしょうし、UTMBも機会があれば1度ぐらいは経験してみたいと考えています。
そして、多くのトレイルランナーにも、もっと自然が豊かな、すばらしい山々を経験してほしい-というような、おせっかいな気持ちがなければ、日本アルプスでロングトレイルの大会を、などという大それた話は、大っぴらに叫ぶ必要はないように思っています。

それより何より、ひょんなことから背負い込むことになたハルラ登山競走の開催・成功という、海峡をまたいだ遠大で重たいチャレンジを、まずは乗り越えなければならないわけですし。

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