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京都の「かやぶきの里」

ゴールデンウイークの後半、京都府北部にある芦生の森に出かけた際に立ち寄った「かやぶきの里」の写真を掲載します。

京都府南丹市美山町の芦生の森の入り口から車で20分ほど手前にある、この「かやぶきの里 北村」は、かやぶき屋根の民家が数多く残っている、日本でも有数の地区で、岐阜の白川郷と富山の五箇山の合掌造り集落のように世界文化遺産にこそ登録されてはいないものの、国の重要伝統的建造物群保存地域となっています。

私は40年近く前の中学から高校に上がる際の春休みに、友だちと一緒に雪に埋もれた芦生の森を訪ねて、当時の山の家で自炊をしながら数日間を過ごしたあと、「最寄り」の国鉄駅がある和知まで由良川に沿って約50キロの道のりを、15キロ以上の荷物を担いで歩いたことがあります。

その際にも私は、かやぶきの里の前を通っているはずなのですが、その景色は記憶に残っていません。
大きく蛇行を繰り返す由良川に沿って、次々に現れる山あいの集落の景色はいずれも美しく、長い道のりの全体が、今の景色を見て感じる以上に遠い別世界のように感じたなかで、かやぶきの里だけが特別に見えなかったのでしょうが、近隣の別の集落にも、かやぶきの家が少なくなかったのかもしれません。

いずれにしても、かやぶきの里は今から20年前に保存地区に指定され、その後、やはりそれまであまり知られていなかった芦生の森とともに、この山奥のへき地に都会の人たちを呼び込むための、ちょっとした観光地になっていったもようです。

そして今回、芦生行きを決めて調べてみて驚いたのは、芦生の森も、この山里も、以前に慣れ親しんできた「京都府北桑田郡美山町」では既になく、美しい山の自然の風景を文字を見るだけでストレートに思い起こさせてくれた美山町は7年前、近くにある3つの町と合併して南丹市となっていたことです。
とはいうものの、国鉄がJRになって電化されても、山越えの道路や川に沿った道路が整備されて広くきれいになっても、この地域が都会になったわけではなく、山の姿や集落のたたずまいは、ほとんど変わってなどいないようです。

BL130505美山町かやぶき民家1P1010881  BL130505美山町かやぶき民家2P1010879  BL130505美山町かやぶき民家3P1010889

瓦ぶきやスレートぶきの屋根の家も交じる、かやぶきの里の手前、由良川沿いの道路のわきには、レンゲ畑が広がっていました(中央、左)。
マメ科のレンゲは、根っこに付く根粒菌の働きによって窒素を取り込むことから、かつては田植え前の水田にすき込む「緑肥」として植えられ、私にとっては、古代史や考古学が好きだった小学校時代、独りで何度も訪ねた奈良・飛鳥の里のレンゲ畑や、上に書いたように歩いて訪ねたこともある和知に、やはり小学校時代、母の知人を訪ねた旅行の際、山あいに広がっていたレンゲ畑が懐かしい風景です。

しかし今や、かやぶきの里の周辺でもあまり見かけないようになったレンゲ畑がこの里にあるのは、どうやら観光用に植えられているからのようです。

とはいえ、このかやぶきの里は、由良川沿いの道路を隔てて反対側にドライブインと駐車場が設けられているとはいうものの、白川郷のようにレストランや有料のギャラリーなどになった民家は集落内に見当たらず、人々が以前通りに住んでいる様子を見せてもらえる場所のままのようです(右)。
こんなふうに商業主義に毒されることなく、自然な山里のたたずまいが残されているのは、古都・京都の奥座敷ならではの堂々とした誇り高さによるもののようにも思いますが、世界遺産ほどには箔(はく)が付いていないことが幸いしているのかもしれません。

BL130505美山町かやぶき民家4P1010891  BL130505美山町かやぶき民家5P1010902  BL130505美山町かやぶき民家6P1010910

白川郷の荻町集落のように、近くの高台から、かやぶき屋根の家屋をまとめて見下ろせる展望台がないのは、ちょっと寂しいのですが、道路を隔てた由良川の堤防からは集落の遠景を眺めることができ、背後の山の北山杉の林とかやぶきの集落がマッチすることが分かります(右)。

集落内の高いところから見下ろすと、かやぶき以外の屋根が目につきますが、これもありのままの姿。
道向かいのドライブインの建物が、逆にかやぶきなのが逆転していて、おかしく思えます(左)。
この写真は、赤いタネのプロペラが幾つも下がったカエデの枝越しに撮っています。

かやぶき屋根の北側の面は、日当たりが悪く、冬場の雪が長く残るなどして湿りがちになるためでしょうか、かやの上に黄緑色のコケがむしているのが目立ちます(中央)。
この写真にあるように、かやぶき屋根のひさし部分の下から、瓦やスレートのひだしが突き出している家が少なくありませんでしたが、地元の人に聞いたところ、瓦などの屋根の上にかやをふいているわけではなく、ひさしの部分が湿って傷みやすいことから、別の材質のひさしを継ぎ足しているのだということでした。
この写真にはまた、火災が起きた際、屋根の上まで水を飛ばす「放水銃」の収納庫が見えています。

BL130505美山町やぎ1P1010938  BL130505美山町やぎ2P1010948  BL130505美山町やぎ3P1010937

1泊2日で出掛けた芦生の森行きの1日目、散策のあと、かやぶきの里を訪ねた私は、宿泊先となった芦生の山の家に戻る途中、女性がリードをつけたヤギを連れて、道路わきで草を食べさせているところを見かけました(右)。

「ヤギちゃん、撮らせてくださいね」
車を降りた私がたずねたところ、ヤギに振り回されるようにしてリードで「綱引き」をされていた女性の答えは「でも、この子、狂暴なんですよ」

女性によると、このヤギの「コメ」ちゃんは、ミルクを出してくれるものの、お乳を誰にでもしぼらせてくれるわけではないとのこと。
それでも、こわごわコメちゃんの周りを走り回ったあげく、ようやく笑顔のすてきな女性と、威勢良く草をはんでいるコメちゃんのツーショットをものにできました。

「あそこの小屋の前にいる子は、人懐っこいですよ」
女性に言われるままに少し離れた小屋の前に行って見かけたのは、やはりメスのヤギの「ムギ」ちゃん(左、中央)。

こちらはうかがった通り大人しいヤギで、頭をなでさせてくれるばかりか、足元の草をちぎって差し出すと、それを美味しそうに食べてくれます。
真っ白でかわいげのあるヤギを見ていると、自宅で留守番をさせている愛猫のチーコのことが思い起こされました。

この女性は近くで、山菜やシカなど野性動物の肉などを素材にした料理を出すレストランを営むとともに、芦生の森などをフィールドに子どもなど向けの自然教室を運営している「田歌舎」のスタッフ。
翌日の帰路、コメちゃんのミルクを使ってつくったというチーズを買って行こうとしたのですが、残念ながら売り切れで、代わりに同じミルクでつくったアイスをいただきました。

40年近く前、芦生の森で自炊したときには、近くの「よろず屋」さんで手に入ったタンパク質は、冷凍された鶏や豚の肉だけでした。
それを思い起こすと、フレッシュなヤギのミルクを使った、まさにバタ臭くて、甘く美味しいアイスの味は、この山奥の里にも長い時間が流れたことを思わせました。

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