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“走るマラソンカメラマン”辰巳郁雄写真展 走った!撮った!世界のマラソン

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創る・遊ぶ・つながる

体育会系のこのブログですが、このところグルメやアートのネタを連発して「脱線」ばかりが続いています。
でも秋はスポーツの秋であるばかりか、食欲の秋でもあり芸術の秋でもあるということで、ご勘弁ください。
そこで本日もまた、名古屋を舞台にした現代アートの祭典「あいちトリエンナーレ2010」のネタです。

これまでに2度ご紹介した「長者町繊維街」のエリアで、参加型のおもしろいイベントがあると聞いていましたので、ようやくパンクを修理したクロスバイク(自転車)を駆って出かけてみました。

そのイベントのタイトルは「タスク・パーティ」。
ドイツ生まれ、ニューヨーク在住のアート作家オリバー・ヘリングさんが仕掛けたものです。
ヘリングさんは「都市に生きる見知らぬ人たちとの即興的なコラボレーションを軸にした、ストリート・ビデオやパフォーマンスの作品で知られる」とのこと。

トリエンナーレでも映像作品を発表されていますが、今回は参加者に「即興的な」創造行為を楽しんでもらうための「監督役」に徹してられます。
そしてタスク・パーティとは、多くの参加者がその場で与えられた任務(タスク)を実行して楽しむという遊び。
「女装・男装をする」「パラダイスをつくる」「電車ごっこをする」…。
そんなふうに何かをつくったり、したりといった任務を、参加する人たちがまず紙に書き、それを箱に入れたり壁にはったりします。
そのうえ、別の人が自身の任務を「くじ引き」や「求人募集」先を選ぶように決めて実行するのが遊び方です。

会場となった空きビルの1階フロアには、紙や布、ハサミやテープ、ペンや絵の具などの工作材料や様々な衣装や化粧台などの「遊び道具」があちこちに置かれ、さまざまな任務に対応できそうです。

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乗りのいい音楽が流れる会場に入ると、若者や子どもなどが何10人も集まって、その中で法被を着てビデオカメラを持った外国人男性が、人の良さそうな笑顔を振りまきながら歩き回っています。
他人を構えさせない立ち居振る舞いに、なんだか親近感を覚えてあいさつすると、やはり、この人がヘリングさんでした。

4時間にわたるパーティの間中、カメラを持ったままで、参加者に話しかけたり笑いかけたりしながら休みなく回し続けていたヘリングさんですが、私のカメラの前で任務の実行を演じてもくれました。
「法被を着て紙風船で遊ぶ」という任務を負った女性の相手をしてくれたのです(中央)。

ポップなデザインの仮面を制作中に見せてくれたのはデザイン系の学校に通っている美人の学生さん。
「『ある人種の特徴的な仮面をつくる』と言われ、私の学校の『はじけた』感じを表現しました」とにっこり。

昼食などのため中座して、パーティの終わりがけに戻ってくると、人は減っていましたが、代わりにいろいろな作品が並び、多くの人が遊んだあとで会場は見事に散らかっていました。
参加者の1人は、シュレッダーでつくったらしい山積みの紙吹雪を宙に舞わせて遊んでいました(右)。

アートというものは、どうやら「常識」「管理」「決まり」など、もろもろの束縛するものから、自由に創造する心を解き放たせることでつくられるもののようです。
ですから遊ぶという行為こそ創造するという行為の根幹にあり、アートは遊びの延長線上にあるようです。

みんなで楽しくはじけて、いろいろなものが生み出されたパーティに触れて、そんな風に思いました。

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遊びといえば、それが得意なのは子どもです。
タクス・パーティでも多くの子どもたちが自然に遊ぶ姿が見られ(左)、それが大人たちを刺激しているようにも思えました。

そして、パーティから中座している間、長者町会場の中でまだ見ていない展示場を訪ねている際、最も印象深かったのが子どもたちによる作品でした。

その1つは、子どもたちが工作してつくった様々な「地獄」が展示されている作品(右)。
虫をいじめたり消しゴムを貸してくれなかったりした人が落ちるという地獄について、スクリーンの中でビデオ出演する制作者の子どもたちが説明するのですが、その発想の大胆さや突拍子もなさは、ちょっとやそっとの芸術家では太刀打ちができないほどでした。

もう1つは、ビデオだけの作品なのですが、これがとんでもない「傑作」でした(中央)。
作品の内容は、何グループもの子どもたちが、動物園にいる何種類もの動物の前で替え歌を歌うというもの。
その歌は「1週間の仕事」。
たとえば、ワニが主人公なら「月曜日に水にもぐり」「火曜日にフナを食べた」といった具合。
これまた歌詞の発想の奇抜さも、上手じゃない歌のシュールな感じも大人にはできないおもしろさでした。

いやいや、子どもはすごい。
といいますか、子どもに学ぶことや子どもの心を持ち続けることは、芸術家にとって大事なことなんだろうなと思えました。

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タスク・パーティの会場になった空きビルの1階では、トリエンナーレの期間中に開かれる地域の祭りで、長い間途絶えていて復活することになった山車の制作が進んでいます。
実は数日前に、この山車を引く最後の練習会があって、これものぞいてきましたので、写真を紹介します。

山車は太い木材を使って骨組みをつくった立派なもの(右)。
それを引くのは繊維問屋街の会社の2世、3世に当たる40代前後の若い社長たち。
皆が社長なので、「オレが中心」という気持ちを抑えて息を合わせるのが練習の主な目的だと聞きましたが、いやいやなかなか、ぴったりと呼吸が合っていました。

山車そのものも、山車を復活させるというプロジェクトもトリエンナーレの「作品」で、山車のデザインは、台や屋根の上に自転車や、ミニ自転車に乗った人形が乗っかるというコミカルなもの(中央)。

山車の方向転換は、京都・祇園祭の山鉾のように、割った竹を敷いて車輪を滑らせる「辻回し」という手法で行われていました(左)。

以前の記事で、繊維不況の風を受けた長者町繊維街が「シャッター街と化している」などと、人づての表現で書きましたが、それは語弊があったようです。
確かにこの界隈には空きビルや空き地、空き室が目立つのですが、繊維問屋の多くは2000年代に入ってから小売りを行うなどで業態を変えて経営を伸ばしているということです。

そして、そんな風に互いが創意工夫をする中で協力しあって「町づくり」の活動が進んできていたそうです。
つまり、トリエンナーレによって一から町の再生が期待されているのではなく、既に再生の軌道に乗っている町がトリエンナーレの受け皿となったというわけです。

町づくりの中で、横のつながりが強くなっていたことから、トリエンナーレに多くの空きビルや空き室を、なんと無償で貸し出すなど全面的なサポートの方針を打ち出すのも容易だったということ。
タスク・パーティに提供された法被や布なども、すべて地元が用意したものだったそうです。

人と人とのコラボレーションも目指したヘリングさんのタスク・パーティは、そうした人のつながりによってさらに生まれ変わろうとしている町にとっては、お似合いのイベントだったと言えます。

それにしても初対面の私に友人のように接してくれたヘリングさんは、マラソンの写真のことまで興味深そうに聞いてくれて、恐縮してしまいました。
「あなたに、とてもインスパイア(刺激)されました」と真顔で言ってくれるヘリングさんは、他人から何かを吸収する柔軟な力が強い人なのだと思います。
「明日はニューヨークに戻って、次の作品の展示を準備するんです。休めないんだけど、これがボクにとってのマラソンなんです」
そう話してくれたヘリングさんと握手を交わし、「人生を楽しく走りつづけたい」という思いを新たにしました。
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